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『中華人民共和国外商投資法』の紹介と整理

2020年3月31日
『中華人民共和国外商投資法』の紹介と整理

中国における外資による投資の新たな基本法である「外商投資法」(以下、「本法」といいます)が、昨年(2019年)3月15日に公布され中国外商投資法がついに可決!中国外国投資規制ーその歴史と昨今の動向、本年(2020年)1月1日から施行されました。
その規定内容を具体化する関連規則・法令等の制定作業が進められ、注目を集めてきました。
そして、本法が施行直前の2019年12月半ばから年末にかけて、規定内容全般について定めた「外商投資法実施条例」をはじめとする関連規則・法令等が相次いで制定・公布され、本法と同時に施行されました。

本稿は、外商投資法の紹介並びに中国へ投資する外国企業と外商投資企業に直ちに生じる影響や対応すべき事項について、主な点を整理するものです 。

1.  外商投資法の紹介

外商投資法の紹介

(1)本法の概要と適用範囲

外商投資法とは、中国における外国投資者による会社の設立や買収等をはじめとする投資活動に適用される、外資投資に関わる新たな基本法です。
外商投資法の2条2項によると、外国投資の定義は、以下の通りです。

  1.  外国投資者による中国国内での外商投資企業の設立
  2.  外国投資者による中国国内企業の株式等の権益の取得
  3.  外国投資者による中国国内で投資の新規プロジェクト
  4.  法律等の規定するその他の方式による投資

外商投資企業とは、投資の全部又は一部を外国投資者が行い、中国の法律に基づき中国国内において登記登録を経て設立された企業をいいます。(2条3項)

即ち、本法の適用範囲は、「外国投資者」(外国の自然人、企業又はその他の組織)が、「直接または間接的に中国国内において行う投資活動」(上記の外国投資)といいます。

(2)本法の主な規定項目とその内容

本法には、投資促進、投資保護、投資管理、法の責任が含まれています。
この4つの項目は、本法の基本的な枠組みとして、主に以下のような内容が定められています。

① 投資促進

  • 外国投資者による中国への投資を促進するために、本法は主に以下の促進措置を規定しています。
  • 企業の発展を支援する各種政策の外商投資企業への平等な適用。(9条)
  • 外商投資に関連する法律法規の制定における外商投資企業の意見聴取。(10条1項)
  • 特別経済区域での設立等の方法での外商投資促進。(13条)
  • 外国投資者による特定業種・分野・地域への投資の奨励・誘致及び優遇措置の提供。(14条)
  • 外商投資企業による標準化業務への平等な参加。(15条)
  • 外商投資企業による政府調達への平等な参加および政府による外商投資企業が中国国内において生産した製品、提供するサービスへの平等な取扱い。(16条)
  • 外商投資企業による証券の公開発行等による資金調達の是認。(17条)

 

② 投資保護

国は、外国投資者の中国国内における投資、収益及びその他の合法的権益を保護します(5条)。
本法では、具体的には、以下の内容を定めています。

  • 原則的に外商投資に基づく財産を徴収・収用しないが、例外的に徴収・収用可能。(20条)
  • 知的財産権及び商業秘密の保護の強調。(22条、23条)
  • 技術譲渡の強制の禁止。(22条2項)
  • 外商投資企業の苦情申立の処理の仕組みの確立。(26条)

 

③ 投資管理

本法は、外商投資について、以下の通り、投資管理に関する規定を設けています。
そのうち、①~③の参入前内国民待遇及びネガティブリスト管理制度(28条)は、重要な規定です(2. ①)。

  • 外国投資者は、外商投資参入ネガティブリストに規定する投資禁止分野に投資を行ってはならない。(28条)
  • 外国投資者は、外商投資参入ネガティブリストに規定する投資制限分野に投資する場合、ネガティブリストに規定する条件に合致しなければならない。(28条2項)
  • 内外資一致の原則に従い、外商投資を監督管理します(28条3項)。
  • 投資プロジェクトの審査確認・届出(29条)、特定分野の許認可(30条)等。
  • 外商投資情報報告制度(34条)
  • 外商投資国家安全審査制度(35条)

④ 法の責任

本法には、投資禁止分野へ投資した場合、投資制限分野に関する参入特別管理措置に違反した場合、及び情報報告義務に違反した場合等の罰則を規定しています。

 

2. 外国投資者への影響

本法は、中国が外国投資を規制するための新しい枠組みを定め、「外資三法」(「外資独資企業法」、「中外合弁企業法」および「中外合作経営企業法」の総称)によって確立されていた基本的な法制度に変更を加えました。
中国へ投資する外国投資者にとっては、本法によって確実性と自由が保障されます。
具体的には、以下の4つの側面に反映されます。

① 本法は、正式に「内国民待遇」と「参入ネガティブリスト」という外商参入制度を規定し、中国への外国投資の確実性を高めています。

参入ネガティブリストにより外国投資における禁止分野と制限分野が明らかになり、外国投資者は投資のプロジェクトを承認できるかどうかを心配する必要がなくなり、確実に投資するかどうかを決めることができます。
参入ネガティブリストの導入と短縮により、投資分野が外国投資者にとってより開放され、禁止と制限の分野が徐々に少なくなってきます。
特に、常に厳しく制限されてきた金融の分野には、過去1年間において外国投資者に対する多くの制限が緩和され、基本的に外国投資に対し全て開放して来ました。

② 本法は、審査および承認の制度を基礎とする投資管理システムを廃止し、事後報告システムに置き換えました。

本法では、新たな外商投資情報報告制度が構築され、外国投資者または外商投資企業は、「企業登記システム」および「企業信用情報公示システム」により商務部門に投資情報を提出することになりました(34条1項)。
これによって、承認に付随する多くの不確実性が取り除かれました。
例えば、投資家は、投資のプロジェクトが最終的に承認されるかどうかを心配する必要がなくなり、また、中国の関連管理部門は、中国と外国の株主間の特定のビジネス契約を検討する権利がなくなりました。

③ 本法は、外国企業と国内企業の平等な扱いを原則として、外商投資企業のステータスは国内企業と平等であり、中国の国内市場競争に参加でき、中国市場の配当を享受できること等を明確にしています。

④ 外商投資企業の組織構成は、従来の外資企業のような形態から中国の会社法に基づく企業の形態に変更され、国内企業と同様になります。

本法の施行に伴い、従来外資による法人形式の投資を規律してきたいわゆる「外資三法」が廃止されました。(42条)

外資三法が廃止されますと、各類型の外商投資企業の組織構成等について「会社法」及び「合名会社法」が全面的に適用されることとなります。(31条)つまり、従来の外資三法と違い、中国自然人も外資投資企業に投資することが可能になりました。

上記42条の規定に基づき、外商投資企業における組織構成は変更されなければなりません。
例えば、中外合弁企業の場合は、中外合弁企業法に基づき、株主会が存在せず、各出資者により選任された董事により構成される董事会が最高意思決定機関とされるなど、特殊な組織構成となっていましたが、中外合弁企業法の廃止により、会社法に基づく株主会の設置等大幅な変更が生じることとなるため、当該変更に伴う取扱いや影響が注目されていました()。

3.  注視する必要がある事項

投資契約書を、①外商投資参入ネガティブリスト以外の分野に投資する契約書、および、②外商投資参入ネガティブリストにより投資が禁止される分野に投資する契約書および外商投資参入ネガティブリストにより投資が制限される分野に投資する契約書に分類した上で、各投資契約書の有効性に関する状況に注視する必要があります。

(1)外商投資参入ネガティブリスト以外の分野に投資する契約書

外商投資参入ネガティブリスト以外の分野には事由に投資できるのですから、このような投資契約書について、当事者は、契約が中国の関連主管部門の認可又は登録を経ていないことを理由に、契約書の無効又は効力未発生を主張できません。
本法の施行前には、このような契約書は、関連主管部門への届け出により管理されていましたが、本法の施行後は同様に審査確認を受けなくても契約書の法的有効性に影響を与えないものとされました。

(2)投資禁止分野及び投資制限分野への投資契約書

外商投資参入ネガティブリストにより投資が「禁止」される分野に投資する契約書について、当事者は、契約書の無効を主張できます。
また、外商投資参入ネガティブリストにより投資が「制限」される分野に投資する契約書について、制限の参入特別管理措置に違反したことを理由で契約書の無効を主張できます。

即ち、外商投資参入ネガティブリストに違反する投資については、当該投資に関する契約書も無効と理解されることになります。

4. 過渡期の取扱い

本法の第42条(第二、④)によると、「外資独資企業法」、「中外合弁企業法」および「中外合作経営企業法」に基づき設立された外商投資企業について、本法施行後5年以内は引き続き従前の組織形態、組織機構等を維持することができるとし、過渡の猶予期間を設けています。

これに関しまして、中国市場監督管理総局は、2019年12月31日、「外商投資法を徹底実施し外商投資企業登記を遂行することに関する通知」(以下、「通知」といいます)を公布しました。
本通知は、「外商投資法」の施行に伴い、外商企業の登記手続、外商投資情報報告制度の実施措置及び過渡期の取扱い等の内容を詳細に規定します。

本通知に基づき、外商投資法施行前に設立された法人格を有しない外商投資企業[i]については、本法施行後5年以内に、パートナーシップ企業への変更を申請することができます。(通知第10条)

2020年1月1日「外商投資法」施行前に設立された外商投資企業が同法施行後5年以内に「会社法」の強行規定に合致しない最高権力機構、法定代表者又は取締役選出方式、議決規則等の事項を変更する場合には、定款を修正し、法に従って登記機関に変更登記、定款又は取締役の届出等の手続を行わなければなりません。(通知第11条)

同様に、上記外商投資企業が同法施行後5年以内に組織形態、組織機構の変更を申請する場合、変更前の組織形態、組織機構及び議決規則に基づいて変更又は抹消登記を申請していれば、登記機関は、申請を受理しなければなりません(通知第12条)。

中外合弁企業、中外合作経営企業の組織形態、組織機構等が変更された後において、変更前に締結された株主間契約に定める期間内に同契約記載の手続に従って中外合弁企業、中外合作経営企業の持分を譲渡し、株主の変更を申請する場合には、株主の全員が改めて持分譲渡の規則を約定した場合を除き、登記機関は申請を受理しなければなりません(通知第13条)。

5.まとめ

以上のとおり、本法の特徴を見ますと、中国は、活発に外国からの投資を呼び込もうと考え、そのような方針に合わせた政策を実施しています。
この法律の制定を含め、中国への投資、企業進出の受け入れに関する中国政府の姿勢には今後も注目する必要があります。

 

[i] 中外合作経営企業法に基づく合作企業は、中国側と外国側との共同事業で、法人格のない企業形態も選択可能でした。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

ベリーベスト 法律事務所弁護士編集部
ベリーべスト法律事務所に所属し、企業法務分野に注力している弁護士です。ベリーベスト法律事務所は、弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、中国弁護士(律師)、それぞれの専門分野を活かし、クオリティーの高いリーガルサービスの提供を全国に提供している専門家の集団。中国、ミャンマーをはじめとする海外拠点、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも特徴のひとつ。依頼者様の抱える問題に応じて編成した専門家チームが、「お客様の最高のパートナーでありたい。」という理念を胸に、所員一丸となってひたむきにお客様の問題解決に取り組んでいる。
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