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令和2年著作権法改正について弁護士が解説(詳細版)①

2021年2月23日
令和2年著作権法改正について弁護士が解説(詳細版)①

1.はじめに

「著作権法及びプログラムの著作権に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律」は、令和2年5月26日に衆議院で、6月5日に参議院でそれぞれ可決され、同月12日に公布されました(令和2年法律第48号)。

施行日は、改正の内容によって異なり、以下のとおりです。
本稿では、「著作権法」を単に「法」と、「プログラムの著作権に係る登録の特例に関する法律」を「プログラム登録特例法」と略称します。

改正法 改正の内容 施行日
著作権法 ・リーチサイト対策
・写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大
・著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入
・行政手続に係る権利制限規定の整備(地理的表示法・種苗法関係)
令和2年10月1日
・侵害コンテンツのダウンロード違法化
・著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化
・アクセスコントロールに関する保護の強化
令和3年1月1日
プログラム登録特例法 ・プログラム登録に関する新たな証明制度の新設 公布日から1年以内で政令で定める日
・国と独立行政法人が登録を行う場合の手数料免除規定の廃止 令和3年1月1日

本稿では、先行して令和2年10月1日に施行に至った改正内容即ちリーチサイト対策、写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大、著作物を利用する権利に関する対抗制度及び行政手続に係る権利制限規定の整備の導入について解説します。

2.リーチサイト対策

リーチサイト対策

(1) 改正の背景

現行法では、著作権者の許可なく著作物をアップロードすることは公衆送信権(法第23条)の侵害になりますし、違法アップロードされた音楽・映像を違法アップロードであることを知りながらダウンロードすることは違法とされています(法第119条第3項)。
しかしながら、違法コンテンツへのリンクを集約したいわゆるリーチサイトや、違法アップロードされた(音楽・映像ではない)書籍、漫画、論文、コンピュータープログラム等のダウンロードが行われるような事態に対する対策が不十分でした。
そこで、リーチサイト対策及びダウンロード違法化・刑事罰化による海賊版被害の拡大防止を図ることを目的としてこの度の法改正が行われたのです。

(2) リーチサイト・リーチアプリにおけるリンク提供行為

新設された法第113条第2項は、以下のとおり定めています。

2 送信元識別符号又は送信元識別符号以外の符号その他の情報であってその提供が送信元識別符号の提供と同一若しくは類似の効果を有するもの(以下この項及び次項において「送信元識別符号等」という。)の提供により侵害著作物等(著作権(第28条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。以下この項及び次項において同じ。)、出版権又は著作隣接権を侵害して送信可能化が行われた著作物等をいい、国外で行われる送信可能化であって国内で行われたとしたならばこれらの権利の侵害となるべきものが行われた著作物等を含む。以下この項及び次項において同じ。)の他人による利用を容易にする行為(同項において「侵害著作物等利用容易化」という。)であって、第1号に掲げるウェブサイト等(同項及び第119条第2項第4号において「侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等」という。)において又は第2号に掲げるプログラム(次項及び同条第2項第5号において「侵害著作物等利用容易化プログラム」という。)を用いて行うものは、当該行為に係る著作物等が侵害著作物等であることを知っていた場合又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある場合には、当該侵害著作物等に係る著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。

上記条文中、「侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等」がリーチサイト、「侵害著作物等利用容易化プログラム」がリーチアプリとされるものですが、法第113条第2項第1号及び第2号は、それぞれより具体的に以下のとおり定めています。

1 次に掲げるウェブサイト等

イ 当該ウェブサイト等において、侵害著作物等に係る送信元識別符号等(以下この条及び第119条第2項において「侵害送信元識別符号等」という。)の利用を促す文言が表示されていること、 侵害送信元識別符号等が強調されていることその他の当該ウェブサイト等における侵害送信元識別符号等の提供の態様に照らし、公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト等

ロ イに掲げるもののほか、当該ウェブサイト等において提供されている侵害送信元識別符号等の数、当該数が当該ウェブサイト等において提供されている送信元識別符号等の総数に占める割合、当該侵害送信元識別符号等の利用に資する分類又は整理の状況その他の当該ウェブサイト等における侵害送信元識別符号等の提供の状況に照らし、主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト等

2 次に掲げるプログラム

イ 当該プログラムによる送信元識別符号等の提供に際し、侵害送信元識別符号等の利用を促す文言が表示されていること、 侵害送信元識別符号等が強調されていることその他当該プログラムによる侵害送信元識別符号等の提供の態様に照らし、公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるプログラム

ロ イに掲げるもののほか、当該プログラムにより提供されている侵害送信元識別符号等の数、当該数が当該プログラムにより提供されている送信元識別符号等の総数に占める割合、当該侵害送信元識別符号等の利用に資する分類又は整理の状況その他の当該プログラムによる侵害送信元識別符号等の提供の状況に照らし、主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるプログラム

条文の字面は難しいのですが、要するに、各号イのリーチサイト・リーチアプリは、サイト運営者やアプリ提供者が著作権侵害コンテンツのURLを示して利用を促したり、当該URLを強調表示したりするなどして敢えて公衆をそこに誘導することを目的として制作したウェブサイト等・アプリを、各号ロのリーチサイト・リーチアプリは、掲示板などの投稿型サイトで、ユーザーが著作権侵害コンテンツへのリンクを多数掲載するなどした結果、主に公衆による当該コンテンツの利用を助長するものとなっているウェブサイト等・アプリを想定しています。

そして、法第113条第4項は、「ウェブサイト等」について、以下のとおり定めています。

4 前2項に規定するウェブサイト等とは、送信元識別符号のうちインターネットにおいて個々の電子計算機を識別するために用いられる部分が共通するウェブページ(インターネットを利用した情報の閲覧の用に供される電磁的記録で文部科学省令で定めるものをいう。以下この項において同じ。)の集合物(当該集合物の一部を構成する複数のウェブページであって、ウェブページ相互の関係その他の事情に照らし公衆への提示が一体的に行われていると認められるものとして政令で定める要件に該当するものを含む。)をいう。

更に、同項を受けた著作権法施行令第66条、著作権法施行規則第25条は、以下のとおり定めています。
つまり、「ウェブサイト等」には、同一のURLで特定されるウェブページの集まりとしてのウェブサイトのみならず、 ウェブサイトや掲示板において特定のカテゴリーの下に分類されたページのまとまりや、SNSやブログにおける特定のアカウントによる投稿のまとまりも含まれることになります。

著作権法施行令第66条

法第113条第4項の政令で定める要件は、送信元識別符号のうちインターネットにおいて個々の電子計算機を識別するために用いられる部分が共通するウェブページ(同項に規定するウェブページをいう。以下この条において同じ。)の集合物の一部を構成する複数のウェブページに次の各号に掲げるウェブページのいずれもが含まれていることとする。

1 当該複数のウェブページに共通する性質を示す名称の表示その他の当該複数のウェブページを他のウェブページと区別して識別するための表示が行われているウェブページ

2  当該複数のウェブページを構成する他のウェブページに到達するための送信元識別符号等を一括して表示するウェブページその他の当該複数のウェブページの一体的な閲覧を可能とする措置が講じられているウェブぺージ

著作権法施行規則第25条

法第113条第4項の文部科学省令で定める電磁的記録は、HTMLその他の記号及びその体系で作成された電磁的記録で送信可能化されたものであつて、インターネットを利用した閲覧の際に、一の送信元識別符号によって特定された一のページとして電子計算機の映像面に表示されることとなるものをいう。

法第113条第2項に該当する行為をした場合、例えば、サイト運営者が、違法アップロードされた漫画であることを知っていた又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由がありながら、「人気漫画が無料で読めるサイトを発見!今すぐここをクリック?」などとの誘い文句を用いて、当該漫画が掲載されているURLを自己のサイトに貼り付ける行為をした場合、「著作権、出版権又は隣接著作権を侵害する行為をみなす」と定められているため、著作権侵害行為として差止請求・損害賠償請求の対象となります。
加えて、法第120条の2第3号に該当して刑事罰(親告罪)の対象となり、法定刑として3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はこれらが併科されることになります。

(3) リーチサイト運営者・リーチアプリ提供者がリンク提供行為を放置する行為

新設された法第113条第3項は、以下のとおり定めています。

 3 侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等の公衆への提示を行っている者(当該侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等と侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等以外の相当数のウェブサイト等とを包括しているウェブサイト等において、単に当該公衆への提示の機会を提供しているに過ぎない者(著作権者等からの当該侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等において提供されている侵害送信元識別符号等の削除に関する請求に正当な理由なく応じない状態が相当期間にわたり継続していることその他の著作権者等の利益を不当に害すると認められる特別な事情がある場合を除く。)を除く。) 又は侵害著作物等利用容易化プログラムの公衆への提供等を行っている者(当該公衆への提供等のために用いられているウェブサイト等とそれ以外の相当数のウェブサイト等とを包括しているウェブサイト又は当該侵害著作物等利用容易化プログラム及び侵害著作物等利用容易化プロフラム以外の相当数のプログラムの公衆への提供等の機会を提供しているに過ぎない者(著作権者等からの当該侵害著作物等利用容易化プログラムにより提供されている侵害送信元識別符号等の削除に関する請求に正当な理由なく応じない状態が相当期間にわたり継続していることその他の著作権者等の利益を不当に害すると認められる特別な事情がある場合を除く。)を除く。)が、当該侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等において又は当該侵害著作物等利用容易化プログラムを用いて他人による侵害著作物等利用容易化に係る送信元識別符号等の提供が行われている場合であって、かつ、 当該送信元識別符号等に係る著作物等が侵害著作物等であることを知っている場合又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある場合において、当該侵害著作物等利用容易化を防止する措置を講ずることが技術的に可能であるにもかかわらず当該措置を講じない行為は、当該侵害著作物等に係る著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。

この条文も字面自体は分かり難いものですが、要するに、リーチサイト運営者・リーチアプリ提供者が、侵害著作物等にリンクを提供する行為のみならず、他人によるリンク提供行為を放置する行為も著作権侵害の対象とするということです。
上記の例に倣って述べると、リーチサイト運営者のサイトに、第三者が「人気漫画が無料で読めるサイトを発見!今すぐここをクリック?」などとの誘い文句を用いて、当該漫画が掲載されているURLを貼り付けるリンク提供行為をした場合において、当該サイト運営者が、当該誘導先の漫画が侵害著作物等であることを知っている又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由があり、かつ、当該リンク提供行為の除去が技術的に可能であったのにそれをせずに放置したということになると、当該サイト運営者に本項の著作権侵害行為が成立することになります。

また、本項によれば、自ら直接的にリーチサイト運営行為やリーチアプリ提供行為を行っていないいわゆる「プラットフォーム・サービス提供者」(プラットフォーマー)は、ごく間接的な関与しか行っていませんので、基本的に今回の規制は及ばないものの、権利者からの該当URLの削除要求に正当な理由なく長期間応じないなど「著作権者等の利益を不当に害すると認められる特別な事情がある場合」は例外であるとされています。

法第113条第3項に該当した場合、「著作権、出版権又は隣接著作権を侵害する行為をみなす」と定められているため、著作権侵害行為として差止請求・損害賠償請求の対象となります。
加えて、法第119条第2項第4号及び第5号(リーチサイト運営者は第4号、リーチアプリ提供者は第5号)による刑事罰(親告罪)の対象となり、法定刑として5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又はこれらが併科されることになります。
自身のリンク提供行為よりも第三者によるリンク提供行為の放置の方が、刑事罰が重いことに留意する必要があります。

3.写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大

写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大

 

(1) 改正の背景

旧法第30条の2は、以下のとおり定めていました。 

1 写真の撮影、録音又は録画(以下この項において「写真の撮影等」という。)の方法によって著作物を創作するに当たって、当該著作物(以下この条において「写真等著作物」という。)に係る写真の撮影等の対象とする事物又は音から分離することが困難であるため付随して対象となる事物又は音に係る他の著作物(当該写真等著作物における軽微な構成部分となるものに限る。以下この条において「付随対象著作物」という。)は、当該創作に伴って複製することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該複製の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

2 前項の規定により複製された付随対象著作物は、同項に規定する写真等著作物の利用に伴って、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない

本条は平成24年の改正で加えられたもので、写真撮影、録画又は録音による著作物(写真等著作物)の創作に当たって付随的に写り込んだ著作物(付随対象著作物)についてのみ、例外的に、その複製権や翻案権の侵害とはならないという内容でした。
つまり、あくまで写真撮影、録画又は録音という行為に限定されており、また、著作物の創作に当たって写り込んだ場合のみがその対象となっていたため、創作に当たらない場合(例:スマートフォンのスクリーンショット)は適用外と考えられました。

(2) 改正内容

今回の改正により、本条は以下のとおり改められました。 

1 写真の撮影、録音、録画、放送その他これらと同様に事物の影像又は音を複製し、又は複製を伴うことなく伝達する行為(以下この項において「複製伝達行為」という。)を行うに当たって、その対象とする事物又は音(以下この項において「複製伝達対象事物等」という。)に付随して対象となる事物又は音(複製伝達対象事物等の一部を構成するものとして対象となる事物又は音を含む。以下この項において「付随対象事物等」という。)に係る著作物(当該複製伝達行為により作成され、又は伝達されるもの(以下この条において「作成伝達物」という。)のうち当該著作物の占める割合、当該作成伝達物における当該著作物の再製の精度その他の要素に照らし当該作成伝達物において当該著作物が軽微な構成部分となる場合における当該著作物に限る。以下この条において「付随対象著作物」という。)は、当該付随対象著作物の利用により利益を得る目的の有無、当該付随対象事物等の当該複製伝達対象事物等からの分離の困難性の程度、当該作成伝達物において当該付随対象著作物が果たす役割その他の要素に照らし正当な範囲内において、当該複製伝達行為に伴って、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

2 前項の規定により利用された付随対象著作物は、当該付随対象著作物に係る作成伝達物の利用に伴って、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の能様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りではない。

先の平成24年の改正時に比べて、益々スマートフォンやタブレット等のデバイスが普及し、動画・配信プラットフォームが発達拡大した現代においては、写り込みに関する権利制限規定についてもその対象範囲を相応に拡大することになったのです。

どこが変わったかというと、改正前は「写真の撮影、録音又は録画の方法」に限られていたため、物への固定を伴わない生放送・生配信や、固定を伴うものであっても、その他の方法による場合(例:模写、スクリーンショット、CG化)は対象外でしたが、改正法により、「事物の影像又は音を複製し、又は複製を伴うことなく伝達する行為」全般に拡大されたことで、これらにも権利制限が及ぶことになった他、改正前の「著作物を創作するに当たって」という要件もなくなったために、固定カメラによる撮影等著作物の創作行為とはいえない場合でも権利制限が及ぶことになりました。
加えて、改正前は「分離することが困難」という要件があったため、例えば、以前から著作物である絵画が飾られた部屋で撮影を行う分には、敢えて絵画を除去して撮影することは社会通念上困難であるため分離困難と認められる一方、殊更に絵画を用意して撮影する場合は分離困難とは認められませんでしたが、今回の改正により、そのような場合でも「軽微な構成部分」とか「正当な範囲内」の要件を充たせば権利制限が及び得ることになりました。

4.著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入

著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入

(1) 改正の背景

改正前は、著作物の利用許諾に関する定めとして法第63条が存在していたものの、著作物の利用を許諾した者(ライセンサー)がライセンス対象の著作権を第三者に譲渡した場合におけるライセンスの帰趨についての定めはありませんでした。
従って、著作物の利用許諾を受けた者(ライセンシー)は、著作権が譲渡された場合、譲受人に対して自身のライセンスを対抗することができませんでした。
しかし、著作権の譲渡によりライセンスの効力が失われるとすると、ライセンシーは安心してライセンスを受けることができず、不安定な立場に置かれ続けますし、著作物の利用を促進する観点からも望ましくありません。

このような不都合に対処するために、既に特許法では平成23年の特許法改正で当然対抗制度が導入されておりました(特許法第99条)。
つまり、特許権の利用許諾(ライセンス)を受けた者は、自身のライセンスを対象特許権の譲受人や専用実施権を得た者に対して当然対抗することができるため、一度ライセンスを受ければ、対象特許権につき譲渡や専用実施権の設定がなされた場合でも、その利用を継続することができます。
なお、この当然対抗制度は、実用新案法及び意匠法で準用されておりますが(実用新案法第19条第3項、意匠法第28条第3項)、商標法では準用されておらず、通常実施権の登録をしないと、商標権の譲受人や専用実施権を得た者に対抗することはできない(商標法第31条第4項)ことに留意する必要があります。

(2) 改正の内容

今回新設された法第63条の2は、以下のとおり定めています。

利用権は、当該利用権に係る著作物の著作権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。

本条は、当然対抗制度を著作権の利用許諾にも拡大するもので、改正された法第61条3項において、「利用権(第1項の許諾に係る著作物を前項の規定により利用することができる権利をいう。
次条において同じ。)」との定義が新たに設けられたことを受け、利用権に係る著作物の著作権を取得した者に加え、その他の第三者(例:著作権の相続人や破産管財人、差押債権者)に対しても対抗できることを定めるものです。
当然対抗制度ですから、対抗するにあたり、登録等の対抗要件は不要で、利用権を取得した場合には、当然に著作権の取得者その他の第三者に対して対抗できることになります。

5.行政手続に係る権利制限規定の整備(地理的表示法・種苗法関係)

従来から、特許審査手続等においては権利者に許諾なく必要な文献等の複製等ができるとされていましたが、地理的表示法(特定農林水産物等の名称の保護に関する法律)に基づく地理的表示の登録手続及び種苗法に基づく植物の品種登録手続についても、審査が迅速・的確に行われるよう、権利者に許諾なく必要な文献等の複製等ができるようにしたものです(法第42条第2項第2号及び第3号)。
加えて、今後、同様の措置が必要な行政手続の存在が明らかとなった場合に柔軟に対応できるよう、政令により、随時手続を追加し得るものとしました(同項第5号)。

6.終わりに

本稿は、令和2年著作権法改正について弁護士が解説(詳細版)②へと続きます。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

弁護士折田 忠仁
ベリーベスト法律事務所パートナー。1986年に早稲田大学法学部を卒業し、同年司法試験合格。1989年に最高裁判所司法研修所修了後、主に知財案件を扱う特許法律事務所に入所。1994年に米国ロースクールに留学し、LL.M.修了。1995年にNY州司法試験に合格し、同年NY州弁護士登録。帰国後、米国法律事務所との外国法共同事業事務所、大手渉外事務所を経て、2018年9月にベリーベスト法律事務所に参画。帰国以来、外国企業との商取引、内国企業による外国企業及び外国企業による内国企業の買収、外国企業と内国企業との合弁事業の組成・解消等に係る契約審査を中心に、国内一般民商事案件や内外紛争案件も加え、幅広い経験を積んでおります。
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