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リーガルモールビズ企業法務国際取引・海外進出【韓国をホワイト国から除外】対韓国輸出規制強化によるビジネス法務への影響

【韓国をホワイト国から除外】対韓国輸出規制強化によるビジネス法務への影響

本年(2019年)7月以降、急速な日韓関係の悪化が各誌で報じられています。

本記事では、その引き金となった対韓輸出規制の強化により、輸出業務に関わる皆様に生じ得る実務上の影響について、弁護士が解説いたします。

2019年7月4日に先行して出された通達による運用の変更、そして8月7日に公布された政令改正が施行された場合に、輸出管理法令上どのような意味を持つのか、現行の規制内容とともにご説明いたします。

本記事を読むことで、貴社のビジネスにどのような影響があるか、また、会社としてどのような対応が必要かについて、経営判断のための情報収集を行うのにお役立ていただければ幸いです。

1.韓国向け輸出管理の運用の見直しの概要

2019年7月1日、経済産業省は、外国為替及び外国貿易法(以下「外為法」といいます。)に基づく輸出管理制度について、大韓民国向けの運用を厳格化する運用の見直しを発表しました(※経済産業省:大韓民国向け輸出管理の運用の見直しについて)。

(1)特定品目が包括輸出許可の対象から除外

経済産業省は、2019年7月4日から、フッ化水素、フッ化ポリイミド、レジストの3品目について、韓国向けの輸出及び関連技術の移転(以下「輸出等」といいます。)を行う場合、包括輸出許可の対象から外すことを発表しました。
これにより、従前まで当該3品目の輸出等をする際に、あらかじめ包括輸出許可を取得しておき、その範囲内の輸出等であれば個別の申請をすることなく即時の輸出等が可能であった輸出者も、契約ごとに個別の許可申請を行わなければならないこととなりました。

もっとも、3品目の物資に該当すれば常に許可申請が必要なわけではありません。
リスト規制(※輸出貿易管理令別表第1又は外国為替令の第1項から第15項で列挙された貨物又は技術の輸出等について、経済産業大臣の許可が必要となる規制です。)に該当しないこと、さらに②後述3.で述べる韓国をホワイト国から除外する政令改正が施行された後も、キャッチオール規制の要件に該当しないことが確認できれば、許可申請は不要です。

 

たとえば、フッ化水素について、輸出貿易管理令別表第1で定める定義及び除外要件は次のとおりです。

 

輸出貿易管理令別表第1の項目 経済産業省令の定め 解釈上除外される要件
フッ化水素 ①軍用の科学製剤の原料となる物質

又は

②軍用の科学製剤と同様の毒性を有する物質

若しくは

③②の原料となる物質として経済産業省令で定めるもの

軍用の科学製剤の原料となる物質として、

①フッ化水素

又は

②これを含む混合物であって、物質の含有量が全重量の30パーセントを超えるもの

①化粧品、シャンプー、調整界面活性剤、インキ、ペイント、接着剤、調整不凍液又は調整潤滑剤であって、

②個人的使用のため小売用の包装(瓶、缶、チューブ等詰められたもの)

 

 

したがって、フッ化水素を含む混合物であっても、その含有量が30パーセント以下であれば、リスト規制の対象となる規制品目には該当しないことになります。

(2)ホワイト国から韓国を除外

2019年8月2日、韓国に関する輸出管理上の国のカテゴリーを見直し、いわゆるホワイト国(※輸出貿易管理令別表第3に列挙された国)から韓国を削除する政令改正を行う閣議決定がなされ、同月7日公布されました(2019年8月28日施行)(※経済産業省:輸出貿易管理令の一部を改正する政令が閣議決定されました)。

これにより、上記(1)記載の3品目以外であっても、一般包括許可制度(※ホワイト国を仕向地とする場合にのみ利用できる包括許可のひとつで、電子申請で容易に許可を取得できます。)を利用することができなくなります。
ホワイト国以外を仕向地とする場合でも、特別一般包括許可であれば、一定の範囲の貨物又は技術の輸出等について包括許可申請をすることは可能です。
したがって、すでに特別一般包括許可を取得済みの企業であれば、引き続き包括許可による輸出は可能であるため影響は少ないといえます。
しかし、新たに取得する申請のためには、外為法等遵守事項を遵守するための内部体制を整備し、安全保障貿易検査官室による実地調査を受ける必要があり、調査に耐えうる相応の準備を行わなければなりません。

また、より影響が大きい変化は、韓国がホワイト国でなくなった場合に、キャッチオール規制の対象となることです。
リスト規制は、上記(1)でも述べたように、武器や大量破壊兵器等の開発等に用いられるおそれの高いものを規制するため、経済産業省令等によりそのスペックや除外要件が定められています。
したがって、通常の民生品であれば、リスト規制に該当する例は必ずしも多くないと考えられます。
これに対し、キャッチオール規制は、スペックが及ばない貨物等でも兵器等に利用可能であることを考慮し、原則として食材、木材等を除くすべての品目が規制対象となります。
したがって、従前リスト規制に該当しないことが確認できた貨物等の輸出等であっても、個別の取引時にキャッチオール規制の該当性を確認することが、当該政令施行後は必須となります。

2.包括輸出許可とは

今回の政令及び運用の改正で問題となる包括輸出許可について、ここで概要を説明いたします。

(1)原則個別許可

リスト規制に該当する貨物を輸出する場合、原則として経済産業大臣の許可が必要です(外為法第48条第1項)。
輸出許可申請は、申請理由書を契約書や注文書とともに提出して行う必要があります。
したがって、許可がなされる場合、その対象は、原則6か月の有効期間内に行われる、提出した契約書・注文書に記載された貨物の輸出ということになります。
そのため、契約が同じであれば、輸出が複数回に分かれても輸出許可は有効ですが、契約が異なる場合や有効期間後に輸出する場合には、再度輸出許可申請を行う必要があります。

しかし、輸出を頻繁に行う企業にとって、契約するごとに許可申請を行うのは負担が大きく、また、契約後にすぐに輸出することができないため、3年を超えない範囲で包括的に輸出を許可する制度が実務上利用されています。

(2)包括輸出許可の要件

包括許可には、一般、特別一般、特定、特別返品等の種類があり、それぞれ申請を出すことのできる要件が包括許可取扱要領に定められています。
一般包括許可以外を除いて要件として重要になるのは、安全保障貿易検査官室から輸出管理内部規程受理票の交付を受けていることです。

輸出管理内部規程とは、企業等の役員や従業員等が安全保障輸出管理に関する外為法違反行為を行わないために、組織内部の役割分担や手続規程を自主的に構築し、違反取引を事前に防ぐ仕組みです。
通達で公表されている外為法等遵守事項という項目をすべて含む内部規程は、経済産業省に届け出て受理されれば、受理票の発行を受けることができ、ほとんどの包括許可の要件の一つを満たすことになります。
外為法等遵守事項には、具体的には、代表者の輸出管理責任を明確にすることや、該否判定の手続を明確にすること、定期的な監査の実施等の項目が定められています。

輸出管理内部規程を導入する時には、手間がかかりますが、仮に内部規程がないままに外為法違反行為を従業員が会社の事業として行ってしまった場合、刑罰や行政制裁のほか、担当取締役の善管注意義務違反について損害賠償請求を起こされるリスクがあります。
今後輸出の頻度が増加することが見込まれる場合には、内部規程を作成し役員・従業員に周知して違反行為の防止に努めることがリスクマネジメントとして求められるでしょう。
特別一般包括許可の取得は、長期的視点に立てば、リスクヘッジだけでなく、個別輸出許可申請にかかるコスト削減及び輸出の迅速化に資することが期待できます。

3.ホワイト国とは

次に、ホワイト国というキーワードについて説明します。

(1)ホワイト国の定義

ホワイト国という用語は、法令上定められた定義があるわけではなく、安全保障輸出管理実務上、広く使用されてきた俗称です。
法令上は、輸出貿易管理令別表3に列挙された国の総称としてホワイト国と呼ばれています。

改正前の政令で定められていたホワイト国は、次の27か国です。

 

アルゼンチン オーストラリア オーストリア ベルギー
ブルガリア カナダ チェコ デンマーク
フィンランド フランス ドイツ ギリシャ
ハンガリー アイルランド イタリア 大韓民国
ルクセンブルク オランダ ニュージーランド ノルウェー
ポーランド ポルトガル スペイン スウェーデン
スイス 英国 アメリカ合衆国

 

これらの国は、大量破壊兵器等の開発等に繋がる貨物等の輸出等を管理するための国際条約や4つの国際輸出管理レジーム(※法的拘束力を有する条約ではないが、参加各国は各取り決めに従い国内の輸出管理制度を整備するものとされています。)に参加しており、安全保障に関する輸出管理を厳格に実施している国として政令で指定されました。

なお、政令改正後は、同政令別表3の国・地域はホワイト国ではなく、「グループA」と呼称され、韓国はグループB(※輸出管理レジームに参加し、一定要件を満たす国・地域(グループAを除く))と呼称されるそうです。

(2)ホワイト国が受けられるメリット

日本と同程度に厳格に輸出管理を実行している国とそうでない国とでは、輸出許可審査に求められる厳格さが異なります。そのため、ホワイト国に対する貨物及び技術の輸出等は、その他の国よりも規制が緩和されています。

①キャッチオール規制の不適用

ホワイト国は、キャッチオール規制の対象から除外されています。

これまで、アジアでホワイト国に指定されていたのは韓国のみで、その他中国、香港、台湾、インド等の各国については、リスト規制に該当しない貨物又は技術であっても、さらにその需要者及び用途による要件該当性の確認が必要とされてきました。

改正政令が施行された後は、韓国に対する輸出等も、すべてキャッチオール規制該当性を各輸出者において確認をしなければなりません。

② キャッチオール規制とは

キャッチオール規制とは、リスト規制に該当しない貨物・技術であっても、その貨物・技術が核兵器等や武器の開発、製造又は使用のために用いられるおそれがある場合には、輸出許可申請を求める制度です(輸出貿易管理令第3条第1項第3号外国為替令第17条)。
キャッチオール規制の要件を検討する必要があるのは、輸出貿易管理令別表第1又は外国為替令別表の第16項に該当する貨物・技術(※リスト規制に該当しない貨物・技術で、食品や木材でない限り該当する可能性があります。)を、ホワイト国以外の国に対し輸出等するときです。

具体的には、次の点を確認する必要があります。

 

  • 貨物・技術が核兵器等の開発等に使用されるという情報を入手しているか
  • 貨物・技術の需要者について、核兵器等(又は通常兵器)の開発等に過去・現在・将来における関与の情報を入手しているか
  • 経済産業大臣から許可申請をすべき旨の通知を受けたか

 

なお、キャッチオール規制の要件は複雑であり、上記の各ポイントのチェックには詳細なガイドラインが定められていますので、注意が必要です。
たとえば、需要者について要件を検討するためには、経済産業省が公表する外国ユーザーリストを検討する必要があります。

4.まとめ

以上から、今回の輸出規制強化により、実務上影響を受ける可能性が高いのは、これまで輸出許可申請が不要であった第16項に該当する貨物・技術の取引を行う企業であると考えられます。
これに対し、特定3品目についてこれまで包括許可制度を利用していた企業は、移行直後に一時的に負担がかかることは想定されますが、既に輸出管理内部体制を整備しているため、比較的早期に輸出管理部門が順応していくことが予想されるためです。

したがって、これまで非該当証明書の提出だけで輸出を行ってきた企業においては、早期に自社の取引が規制対象か否かを確認し、該当する場合には社内の体制を整備する必要があるといえます。

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弁護士篠原 沙也香
早稲田大学法学部卒業・一橋大学法科大学院修了。ベリーベスト法律事務所に入所後、国内外の一般企業法務、契約書審査の経験を積み、国際的なM&A案件を中心に英語圏・中国語圏の企業法務に注力している。そのほか、香港IPO支援、ベンチャーファイナンス、米国訴訟・国際仲裁を含む紛争案件、税理士・司法書士と連携し事業承継案件を担当。
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