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中国独禁法関連「独禁法三部規定」ついに施行―中国独禁法の今後

2019年9月25日
中国独禁法関連「独禁法三部規定」ついに施行―中国独禁法の今後

1.はじめに-中国独禁法の新しい動向

2018年は中国独占禁止法施行から10周年の年に当たり、この年に中国独占禁止法の改正が着手され、2018年の「国務院機構改革方案」により商務部、国家発展改革委員会と国家工商総局の独禁法執行部門が統一され新しい「国家市場監督管理総局」(SAMR)が発足しました。
2018年に、新たに発足した国家市場監督管理局は独禁法領域で活発に法執行活動を行い、その活発ぶりをアピールしました。そして、2019年5月9日に海南省海口市で行われた全国市場監督管理機関独禁法執行総会議において、国家市場監督管理局は「2018年典型的な独禁法執行十大案件」を公表しました。当該会議によれば、2018年度国家市場監督管理総局の取り扱った独禁法関連案件は合計116件に上り、前年度より30%増でした。

中国独禁法改正に先立ち、国家市場監督管理総局は

(1)「禁止独占協定暫行規定」(独占契約禁止)
(2)「禁止濫用市場支配地位行為暫行規定」(市場優位的地位の濫用禁止)
(3)「制止濫用行政権力排除、限制競争行為暫行規定」(行政権による独占、不正競争禁止)

の三部規定を公布し、2019年9月1日から施行されました。

中国独禁法施行から十年間の実績の積み重ねがあり、直近はこのような実績をもとに独禁法関連法制度の整備を整えています。

2.三部規定共通点

三部規定共通点

(1)法執行機関

従前法執行権限が商務部、国家発展改革委員会と国家工商総局の三つの機関に分かれていた時代の法執行過程における弊害を避け、効率的な法執行を行うため、三部規定における独禁法関連法執行権限は新たに設立された「国家市場監督管理総局」の一つの機関に集約されました。
三部規定によれば、国家市場監督管理総局のみが独禁法関連法執行権限を有することとなっており、各省、自治区、直轄市の市場監督管理部門はその授権を受けて法執行権限を行使することができます。

授権を受けた地方の法執行機関に対して、三部規定は報告義務及び監督制度を設けています。

 

禁止独占協議暫行規定第二条:国家市場監督管理総局(以下「市場監管総局」という)は独占協定関連独禁法執行を担当する。市場監管総局は独禁法第十条第二項の規定に基づき、各省、自治区、直轄市の市場監督管理部門(以下「省級市場監管部門」という)に授権し、その管轄する行政区域における独占協定関連独禁法執行を担当させることができます。

禁止濫用市場支配地位行為暫行規定第二条:国家市場監督管理総局(以下「市場監管総局」という)は優越的地位の濫用関連独禁法執行を担当する。市場監管総局は独禁法第十条第二項の規定に基づき、各省、自治区、直轄市の市場監督管理部門(以下「省級市場監管部門」という)に授権し、その管轄する行政区域における優越的地位の濫用関連独禁法執行を担当させることができます。

制止濫用行政権力排除、限制競争行為暫行規定第二条:国家市場監督管理総局(以下「市場監管総局」という)は行政権の濫用による競争行為を排除、制限に関連する独禁法執行を担当する。市場監管総局は独禁法第十条第二項の規定に基づき、各省、自治区、直轄市の市場監督管理部門(以下「省級市場監管部門」という)に授権し、その管轄する行政区域における行政権の濫用による競争行為を排除、制限に関連する独禁法執行を担当させることができます。

 

(2)法執行手続

三部規定は独禁法違反行為の発見、書面による告発、委託調査、調査協力、公示等に関して、統一的な規定を設けています。

独禁法違反行為の発見は法執行機関の職権、あるいは告発、上級機関からの依頼、ほかの機関からの移送、下級機関からの報告、経営者自ら報告等によります(禁止独占協議暫行規定第十五条)(禁止濫用市場支配地位行為暫行規定第二十三条)(制止濫用行政権力排除、限制競争行為暫行規定第十条)。

書面による告発は、以下の内容を満たさないといけません(禁止独占協議暫行規定第十六条)(禁止濫用市場支配地位行為暫行規定第二十四条)(制止濫用行政権力排除、限制競争行為暫行規定第十二条)。

  • 告発者の基本状況
  • 対象者の基本状況
  • 独占協議にかかわる事実と証拠
  • ほかの行政機関あるいは人民法院に対して同じ事項に基づいてすでに告発あるいは訴訟提起したか否か

市場監管総局が省級市場監管部門に調査を委託することができ、省級市場監管部門はさらにその下級市場監管部門に調査を委託することができます。
下級市場監管部門はさらにほかの行政機関に調査を委託することはできません。調査にあたる機関はほかの機関に対して調査協力を要請することができます。

情報公示(開示)に関して、独禁法執行機関が行政処理決定を下した後、その情報を公開することになっています。

 

(3)独禁法三部規定の法執行と処罰手続

「禁止独占協定暫行規定」、「禁止濫用市場支配地位行為暫行規定」、「制止濫用行政権力排除、限制競争行為暫行規定」の三部規定の中、「禁止独占協定暫行規定」、「禁止濫用市場支配地位行為暫行規定」の二つの規定が処罰手続に関して規定を設けていないため、「市場監督管理行政処罰手続暫行規定」の処罰規定に従って処罰を行います。
ただし、時効、立件、管轄等の規定は除くとしています。また、聴聞手続に関しては、「市場監督管理行政聴聞手続暫行規定」に従って行われます。

「制止濫用行政権力排除、限制競争行為暫行規定」は行政機関を対象としているため、上記規定は適用しません。

3、三部規定の概要

三部規定の概要

(1)禁止独占協議暫行規定

当該規定は、中国独禁法の規定するカルテルの類型等を更に詳細規定を設けました。その第九条の禁止する販売市場あるいは原料仕入れ市場に関するカルテルにおける原料とは経営に必要な技術及びサービスも含まれるとしています。

改善を約束する企業に関して調査中止規定を設けましたが、その適用に関しては再販価格の拘束、生産量と販売量の制限、市場分割等のカルテルに適用しないとしています。

そのほかにも、独占協定の認定、立件、調査、リニエンシー、処罰、公示等に関しても具体的な条項を設けました。

ただし、セーフハーバーに関しては、規定を設けることを検討したものの、最終的に見送りになりましたが、今後の修正において現れることもありうるでしょう。

(2)禁止濫用市場支配地位行為暫行規定

中国独禁法は取引拒絶、抱き合わせ販売、低価格販売等に関して「正当な理由」を求めていますが、必ずしも明確ではありませんでした。
当該規定は、中国独禁法の求める「正当な理由」に関して、個別に列挙する形で明確にしました。
たとえば、原価割れ販売に関して、生鮮商品、季節的な商品、賞味期限近い商品、在庫処理、債務返済のための販売あるいは合理的な期限における新商品の宣伝広告等は正当な理由として認められます。

当該規定はインターネットを駆使する新興企業及び国有企業に対して特に規定を設けました。
近年中国において、インターネットを駆使し、補助金による競争が繰り広げられており、当該規定の「合理的な期限内において新商品の宣伝」がテクノロジー会社の補助金による競争に対応する形になりました。
また、水道、電気、ガス、熱、電信、ケーブルテレビ、郵政、交通運輸等国民生活に密接な業務に従事している国有会社に関して、特別にその優越的な地位を濫用して消費者の利益を害してはならないと規定しました。

改善を約束した企業に対しては調査中止の規定を設けています。

(3)制止濫用行政権力排除、限制競争行為暫行規定

行政権による競争排除、制限とは、特定の公共的な事務を管理する行政組織がその権限を行使して市場競争を妨害することを指します。

行政権による競争排除、制限に対する取締りは、国家市場監督管理総局の2019年における重要な目標の一つとなっており、前述の「2018年典型的な独禁法執行十大案件」においてもすでに取締った案件が二つ含まれています。
ただし、行政権による市場競争排除、制限行為に対して、中国独禁法においても直接処罰する規定は設けられていないため、当該規定においても処罰規定はありません。
行政権の独禁法違反行為あった場合、その上級機関に対して是正させるよう求めることができます。
当該規定において、さらに行政権による市場競争排除、制限行為あった場合に、社会に対してその違法行為を公開することを通じてそのけん制を図るようにしました。

4、最後に

近年中国独禁法執行が盛んに行われており、法執行機関も三つの割拠状態から一つの統一した機関に集約されました。
さらに、法執行に対する地方政府の妨害行為を排除すべく、独禁法執行権限は中央集権的に権限強化されました。
独禁法執行の根拠たる関連法律法規も多く改正、制定されています。
今後も新興テクノロジー分野等に対応できるように、改正が行われる可能性は非常に高いと言えます。

独禁法執行の傾向と関連法規定の内容からすれば、今後国民生活に密接な経済分野における法執行が強まるであろう。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

ベリーベスト 法律事務所弁護士編集部
ベリーべスト法律事務所に所属し、企業法務分野に注力している弁護士です。ベリーベスト法律事務所は、弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、中国弁護士(律師)、それぞれの専門分野を活かし、クオリティーの高いリーガルサービスの提供を全国に提供している専門家の集団。中国、ミャンマーをはじめとする海外拠点、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも特徴のひとつ。依頼者様の抱える問題に応じて編成した専門家チームが、「お客様の最高のパートナーでありたい。」という理念を胸に、所員一丸となってひたむきにお客様の問題解決に取り組んでいる。
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