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中国外商投資法がついに可決!中国外国投資規制ーその歴史と昨今の動向

2019年3月28日

1.はじめに – 中国の外資規制とその緩和の歴史

中国への外国投資については、1979年の「中外合資経営企業法」(1990年等3回改正(1990年改正では、国家は合資経営企業の国有化と徴収を行わないことを原則とする条項などが追加された。))に始まり、「中外合作経営企業法」(1988年)(1988年合作企業法およびその実施細則や外商投資企業清算弁法などの合作企業に関連する法令を総称して中外合作経営企業法と呼ばれる。)および「外資企業法」(1986年)(1986年外資企業法およびその実施細則や外商投資企業清算弁法など外商独資企業に関連する法令を総称して外資独資企業法と呼ばれる。)の外資三法(※1)によって規制されてきました。

毛沢東時代は、企業家や外国投資家は搾取階級として批判されていましたが、文化大革命後(1966年から1976年まで続き、1977年に終結宣言がなされた毛沢東主導による革命運動。)の中国にとって近代化は必須の課題であり、外国直接投資による資本主義流入の弊害よりも、国家は税収、技術、経営管理手法、情報および市場開拓という利益を得、人民は賃金を得ることによるプラスの方が大きく、社会主義経済の有益な補充になるという鄧小平らの主張により、外資に対する門戸が開かれました。

また、中国は1990年代後半から、経済の発展、外貨準備高の増加などからWTO加盟の可能性が出てきたため、外資三法の本格的な改定作業を始め、2001年に其々の実施細則が改正されました。

ドーハでのWTO第4回閣僚会議で2001年11月10日に中国のWTO加盟が満場一致で可決され、翌11月11日に中国は受諾書を寄託し、加入議定書の規定により30日後の2001年12月11日に加盟資格が発効しました。

中国はこの加盟時の約束事項の履行のため、「外商投資方向の指導規定」(2002年4月1日施行)を制定し、これに基づき2002年以降外資規制を段階的に緩和してきました。
近時は自由貿易の擁護者としてアピールしており、米国と反対の方向性を示しています。

昨今は、外国投資規制というと昨年(2018年)8月に米国で成立した通称FIRRMA(Foreign Investment Risk Review Modernization Act of2018)を思い浮かべるかも知れませんが(米国輸出管理改革法-トランプ政権下における輸出管理規制強化が始まった)、外国投資規制については、上記のとおり以前より中国で改正手続きが進められており、2015年には上記外資三法を一本化した「中華人民共和国外国投資法」(以下、「外国投資法」)草案が公表されており、更に昨年(2018年)7月にはネガティブリストを改訂して外資規制を緩和し、12月には「外商投資法」という名称に改めた草案が公表されました。

本稿では2015年「外国投資法」草案および2018年「外商投資法」草案の概要・相違点などを説明した上で、近時の動き(2019年3月15日可決)と注意点について述べたいと思います。

2.2015年「外国投資法」草案

(1)商務省意見聴取

中国商務省は、2015年1月19日、外資三法を一本化した「外国投資法」(草案意見聴取稿)を公表してパブコメ手続に入り、その後様々な議論が繰り広げられました。

草案の趣旨は、改革開放の初期段階で制定された外資三法はその後のWTO加盟等国内外の状況の変化に伴って全体的に対外開放の拡大の要請に対応できなくなっており、この要請に応じた改正を行うことでした。具体的には、以下のような点です。

a)外資三法による審査認可制度は開放型の新経済体制構築の要請に対応できていないこと
b)外資三法の企業組織形態や経営活動などに関する規定には、会社法などの規定と重複または齟齬する規定があること
c)外国資本による企業買収や合併、その他国家安全審査などに関する重要事項は、基本的な法制に集約して統一的に規制すべきであること

 

(2)草案の内容

2015年「外国投資法」草案の要点は、以下のようなものでした。

a)外資投資企業の規制については、その組織形態や経営活動などに関して「内外資企業平等原則」に基づいて「統一的に」会社法の規定を適用する。
b)外資企業の中国「進出」については、ネガティブリストに該当すると認可制を適用するが、ネガティブリストに該当しなければ「届出制」を適用する。認可制から届出制への大きな規制緩和の改定。(投資前内国民待遇)
c)ガティブリスト の外国投資を禁止または制限する分野を明確に規定すると共に、外国投資家は「中国投資家と同等の待遇」を受ける。
d)外国投資への規制緩和と共に、国家安全審査制度や更なる外国投資の促進・保護の制度とし、加えて、外国投資や外資企業の経済活動についての「監査等の制度」を導入して監督管理を強化する。

 

この2015年草案は中国のそれまでの長い法改正の歴史とその流れに沿って、経済のグローバル化に合わせた「三法合一」、つまり、外資三法の統一へと繋がるものでした。

(3) 2016年改正

外資三法を一本化する2015年「外国投資法」草案は法律として成立することはありませんでしたが、2016年には、外資三法の改正がそれぞれ行われました。
全国人民代表大会常務委員会は、2016年9月3日、「中外合資経営企業法」、「中外合作経営企業法」および「外資独資企業法」のそれぞれの改正案を可決し、同年10月1日に施行されました。

改正中外合資経営企業法、改正中外合作経営企業法および改正外資独資企業法は、それぞれ、ネガティブリスト(外商投資参入特別管理措置)に該当しなければ、それまで認可事項であった一定の事項を届出制に変更しました。

3.2019年「外商投資法」

(1)2018年「外商投資法」草案とそれまでの動き

中国は、2018年6月30日、上記外資三法の2016年10月1日施行の法改正による事後届出制への原則的移行による参入手続の緩和・簡素化を更に進め、届出に関する「外商投資企業の設立及び変更の届出管理暫定規則」を改正しました。
これにより、市場監督管理部門での設立登記申請と同じ窓口で商務部門への設立届出ができるようになり、手続の一層の簡易化が進みました。また、2018年7月2日、外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)を改訂し(同年7月28日施行)、外資規制を更に緩和しました。

また、全国人民代表大会(以下、「全人代」)は、2018年の立法計画で外資三法に代わる外国投資法の審議を12月から開始するとしていました。
同計画に基づき、第13期全人代は、2018年12月26日、web siteで外商投資法草案に対する意見募集を公表しました。意見募集期間は2019年1月4日から同年2月24日まででした。

(2)2019年3月15日「外商投資法」可決までの動き

2018年12月に外商投資法草案について意見募集を行う旨公表された時点では、これまでの外資三法の一本化の歴史を見ても、同法の成立までは長期を要するであろうとの見方が大方を占めていました。

しかし、全人代常務委員会は外商投資法草案を複数回審議し、3月4日の人民大会堂での張業遂報道官の記者会見から、全人代は3月8日の全体会議で外商投資法を審議し、その議事日程では3月15日午前に採決されるスケジュールになっていました。そして、現実に、3月15日の11時頃に可決されました。
これにより外資三法の一本化がついに実現しました。同法は来年2020年1月1日に施行されます。(施行前に設立された外資企業は、施行日後5年間、その組織形態を維持できます(39条)。)

外商投資法は、2015年外資投資法草案の要点であった「内外資企業平等原則」を投資前の設立段階(投資前内国民待遇)(28条3項)および設立後の政府調達(16条)、業界の規格制定手続への参加(15条)、許認可手続(30条2項)等において規定しました。
また、登記システムと信用情報公示システムによる情報報告制度(34条)と国家の安全に関する安全審査制度(35条)を創設しました。

4.今後の動き

昨年(2018)12月に全人代が意見募集を公表した当初は上記のとおり法案成立には相当な期間を要するであろうという見方が大方でしたが、中国政府は非常に短期間で法案を成立させました。
このような例は、昨年8月に成立した米国のFIRRMAや昨年12月に成立した日本の入管法改正法等に見られます。
いずれも政府として早急に法律を制定または改正する必要性がありました。
米国のFIRRMAは対中貿易戦争、国家安全保障の支援、米国経済の強化、米通商法のアグレッシブな執行など急務があり、我が国の入管法改正は我が国経済の深刻な労働力不足への早急な対応の必要性などです。
これらの特徴は立法府では比較的簡便な法律を早急に制定した上で、具体的な運用のための細則は政府や行政府の関係省庁の制定する規則によるという形式です。

中国は米国企業の知的財産権保護政策を強力に打ち出す米国の上記FIRRMAへの対応や外交交渉に於ける材料として外商投資法をまずは成立させる必要性があったと見るべきでしょう。
具体的には、第三章 投資の保護 における行政による強制的技術移転の禁止(22条2項)、外資企業の権益保護の強化(22条1項、23条)、政府による法に基づかない外資の市場参入や撤退の制限の禁止や外資企業の生産経営活動への違法な干渉等の禁止(24条)、このような行政機関による権益の侵害についての通報制度(25条)などです。

また、長引く対米貿易協議や米国の各種規制による中国の国内景気の悪化も見逃せません。

一方、第六章 附則 第37条は、米国との貿易戦争を念頭に置いていると思われますが、中国の投資に対して差別的な措置を取る国や地域については相応の措置をとる、と対抗措置を取りうることを規定しています。

外商投資法は42条という簡潔な法律です。
2015年外国投資法草案が170条であったことと比較すると、一目瞭然です。日米同様、実施細則や関連法案の整備を今年中に実行しなければなりません。

まとめ

外商投資法の成立によって、これまでの外国投資規制に関する三法が一本化され単純化されることにより分かり易くなり、且つ、米国のFIRRMAと対照的に、これまでの外資規制を緩和すると共に、保護する内容の法律であり、既に中国に投資をして中国内でビジネスを行っている日本企業にとっても、また、これから中国への投資を考えている日本企業にとっても歓迎すべき法律と言えます。

今後、注視しなければならないのは、このシンプルな法律が実際に運用されるための実施細則や関連法案によって実質的な骨抜きにならないかを見守っていくことです。

 

(※1)a)中外合資経営企業法に基づく合弁企業:中国側と外国側との共同出資による法人。b)中外合作経営企業法に基づく合作企業:中国側と外国側との共同事業で、法人格のない企業形態も選択可能。c)外資独資企業法に基づく独資企業:外国側100%出資の法人。

斜木裕二
弁護士斜木 裕二
国際法律事務所、大手メーカー等の法務責任者を経て、2018年ベリーベスト法律事務所に入所。国際カルテルなどの競争法、国際・国内商取引一般、M&A, JV会社設立等の国際投資案件、グローバルでのグループ子会社の法務体制やコンプライアンス体制、危機管理体制の構築などを手掛る。
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